少子化で塾業界はもう厳しい?これから塾経営者に求められること
少子化の深刻化によって年々子どもの数が減少している現代において、新しく塾を開くことに不安を覚える人も少なくないでしょう。しかし、少子化のなかでも塾マーケットは緩やかに拡大し続けているのが現状です。今回は、塾経営を取り巻く環境や衰退しない理由に加え、これから塾経営する場合に必要なスキルなどを詳しく解説します。
少子化でも塾業界のニーズは高い
塾業界は主に学校に通う子どもをターゲットとしたビジネスであるため、少子化の影響を受けてマーケット規模が縮小するのではないかと考える人もいるでしょう。
しかし、少子化が進行している現在でも、塾業界のニーズは高いのが実態です。以下では、少子化が塾業界に与える影響やニーズの変化について詳しく解説します。
少子化が塾業界に与える影響とは
先述の通り、塾業界は少子化によるマイナスの影響を受けやすいと考えられるマーケットのひとつです。塾のターゲット層となる18歳人口は、1992年から30年にわたって減少し続けています。子どもの数が減ることで塾の利用者数も減少すれば、マーケット規模が縮小していくことも容易に想像できるでしょう。
実際に、2018年のデータによると、1年間で倒産した塾の数は過去最多の35件にものぼりました。倒産の理由は、競合他社との競争激化や教育改革への遅れに加え、少子化の影響もあるとされています。ただし、子どもの数自体は減少しているものの、大学進学率は年々上昇しています。
そのため、塾業界は少子化の影響を受けていながらも、ある程度の利用者数をキープできているといえるでしょう。
塾業界のニーズはプラスに推移している
2018年に塾の倒産数が過去最多を更新したとはいえ、少子化によって塾業界の縮小・衰退が深刻化しているかと問われれば、実際にはマーケットが拡大している傾向にあるのが実情です。
もちろん、少子化の影響自体は受けているため急激な伸びは認められないものの、マーケット全体としては少しずつ拡大し続けています。フランチャイズの塾・スクールの数は、2012年の3万2,163件から、2018年には63万3,423件と緩やかに増加しています。
さらに、フランチャイズの塾・スクールの売上についても、2012年には約3,783億円であったのが、2018年には5,047億円まで伸びており、年々少しずつ増加していることが分かるでしょう。
塾には個人経営の塾とフランチャイズ展開されている塾の大きく2種類がありますが、フランチャイズの塾は開業したてでもある程度の信頼を勝ち取れたり、開業にかかる初期費用を安く済ませられたりするというメリットがあるため、2012年頃からマーケットが拡大し続けています。
現在でもフランチャイズ塾は緩やかに伸びており、少子化のなかでもニーズがプラスに推移しているといえます。
塾経営はまだまだ衰退しない理由
先述の通り、塾マーケットは少子化の影響を受けつつも、とくにフランチャイズ塾を中心として、マーケット全体は緩やかな拡大傾向です。
「塾経営を始めたいけど少子化の影響が不安」という人にとっては、塾マーケット・ニーズのプラス推移は心強い要素のひとつとなるでしょう。以下では、塾経営が少子化が進むなかでも衰退しない理由について詳しく解説します。
理由1:子どもや親の進学に対する考え方が変わっているから
最近では、大学進学率が上昇しているのはもちろん、中学受験や高校受験に力を入れる人が増えています。また、受験対策の早期化が進んでおり、大手フランチャイズ塾においても、中学受験対策の模試を年長で受験し、小学校入学後から塾に通い始めるというスタイルが主流です。
受験や進学に対する意識は年々変化しているため、学校の勉強だけでなく塾での勉強に力を入れる家庭が多くなっています。さらに、少子化は塾マーケットにおいてマイナスの影響をもたらしているのみでありません。
子どもの数が減ることでそもそもの分母が減り、利用者数の急激な伸びは期待できないのも事実です。しかし、ひとりっ子家庭や共働き世帯の増加を受けて、子どもにかける教育資金・教育熱も増加しています。
「とりあえず大学までは出ておこう」という風潮が広がっているのも、塾経営にとってはプラスの傾向であるといえるでしょう。
理由2:塾タイプの多様化
従来までの塾といえば、学校の授業の縮小版的なイメージで、少人数授業を主流としていました。しかし、最近特に人気が高いのはフランチャイズの個別学習塾です。
個別学習塾では、生徒と指導スタッフがマンツーマンで授業を進めるタイプや、指導スタッフひとりに対して生徒が2〜5人程度で授業するタイプなど、それぞれでスタイルが異なります。
集団授業スタイルの塾と比較すると授業料が高くなるというデメリットはあるものの、ひとりひとりのレベルに合わせて丁寧に指導してもらえるため、フランチャイズの個別学習塾を選ぶ人は増加しています。
また、個別指導スタイルの塾はひとつの店舗で指導できる生徒の数が多くないため、店舗数を増やして対応することからマーケット規模を拡大しやすいのも特徴です。
少子化による塾の倒産数が増加するなかでも塾全体のマーケット規模がプラス推移しているのは、フランチャイズの大手個別学習塾などに売上・利用者数が集中していることの表れであるともいえるでしょう。
これから塾経営者に求められること
塾マーケットを取り巻く環境は年々変化しています。
少子化にともなって競争率が激しくなっている現代で、これから塾経営を始める場合は指導スキルだけでは不十分です。以下では、これから塾を経営する人に求められることやポイントについて詳しく解説します。
ターゲットを絞る
塾の立地によってターゲット層は異なります。まずは土地を決めた段階で地域の子どもの数や学校の数、周辺にある塾の指導方針や指導スタイルを把握しましょう。
「学校の勉強についていくのが難しい子をフォローする」「ハイレベルな学校を受験する子向けに徹底した受験対策を実施する」など、地域の教育特性を考慮しながら細かくターゲットを絞ることが重要です。
集客に力を入れる
塾経営には集客が不可欠です。開業時にはもちろん、毎年卒業していく中学3年生・高校3年生の分を埋められるだけの新入生をコンスタントに迎え入れなければ、売上を維持するのは難しいでしょう。
集客するにはとにかく広いエリアを対象とするのがよいと勘違いしがちですが、エリアを絞ってオフライン広告を集中させるのが有効な方法です。
また、広告宣伝にかけるコストや手間を縮小するためには、オンライン広告の活用もおすすめとなります。
経営力を身につける
塾の開業に必要となるのは、指導力ではなく経営力です。別の塾で塾長やエリア長として働いていた経験がある人でも、必ず塾経営を軌道にのせられるとは限りません。
塾経営を成功させるには、先に述べたような集客力はもちろん、マーケティング力やデータ分析力、スタッフ指導力、資金繰り力などが不可欠です。開業前から経営についてもしっかりと学んでおくことが重要となります。
まとめ
今回は、少子化が深刻化するなかでの塾経営について、影響や実態、これから塾経営を始める人が把握しておくべきポイントなどを詳しく解説しました。少子化によって塾の倒産数は2018年に過去最多となっていますが、塾業界全体のニーズやマーケティングは拡大しています。塾経営が衰退しない理由としては、社会全体として進学や受験に対する価値観が変わっていることや、塾タイプの多様化によって比較的マーケットを拡大しやすい個別学習塾が人気を集めていることなどが挙げられます。これから塾を経営する人は、生徒への指導力はもちろんですが、集客力やターゲット選定力、マーケティング力などの経営スキルを身につけることが不可欠です。塾経営を検討している人は、今回の記事をぜひ参考にしてみてください。